慟哭32
紅「総二郎先生が、美味しいお菓子を用意してくれているのよ♪
紅専用にお土産もあるの♪
総二郎先生って、本当に優しいの♪
紅、お嫁さんになってあげても良いな~♪」
あきら「残念だが、総二郎には素晴らしい嫁と子供達がいるよ♪
紅達は、お菓子をくれる人は、皆優しい人なんだよな♪
俺も、優しいぞ♪
お袋のお手製のケーキを持って来ているんだから♪」
桔梗「わあ、夢子おば様のケーキ?
わあい、嬉しいな♪」
お菓子の話で盛り上がりながら、総二郎の居る茶室に、、、
椿「まあ!
夏だというのに、雪景色!!!
なんて贅沢な茶席♪」
あきら「その雪うさぎは、子供達が作ったんだよ♪」
総二郎の凛としたお点前は、芸術の域をも越えて、神の領域の神々しさを放ち、その場にいる者を圧倒した、、、
椿「総二郎は、何処まで登り詰めて行くのか、、、
何が貴方を変えたのかしらね♪」
総二郎「姉ちゃんも人が悪いな、俺にそれを言わせるとは、、、
ああ、勿論、牧野のおかげさ♪
牧野が、俺達を変えてくれたんだ♪
俺は、牧野を想って茶を点てている、、、
俺の牧野への想いを茶で昇華しているんだよ♪
これが、俺の牧野への愛なんだ、、、」
司「・・・・・」
あきら「司、秋の間の庭を観てくれよ♪
姉ちゃんも、次の間に案内するよ♪」
椿「わあ、床紅葉!
この砂漠で紅葉って、すごいわ、貴方達の技術力!」
総二郎「夏の間も見事だぜ♪」
椿「あれは、ブルーローズ!?
夏なのに、あんなに元気に咲いているわ♪」
総二郎「あれは、あきらが改良した砂漠の乾燥にも負けずに咲く、フリルの花弁を持つブルーローズ、、、
どんな困難にも負けずに綺麗に花を咲かせ、凛と立っている、、、」
椿「まるで、あの子のよう、、、」
司「・・・・・」
あきら「俺の『レディつくし』、最高だろ♪」
椿「あきらも、つくしちゃんを、、、」
あきら「ああ、一度牧野に出会ってしまったら、愛さずにはいられない、、、
忘れられない、、、
たとえ、俺のものにならなくても、類の側であの笑顔で笑っていてくれれば、俺は世界で2番目に幸せさ♪」
総二郎「ああ、そうだな、、、
世界一の幸せ者は類だが、俺達も牧野の大切な人の一人になれて、世界で2番目に幸せ者さ♪」
司「・・・・・」
あきら「さあ、春の間に行こう♪
幸運の女神に充電してもらおうぜ♪」
総二郎「だな♪
おい、司、絶対に飛び付くなよ!
怖がらせるんじゃないぞ!」
春の間の庭には、桜が、、、
垂れ、八重、一重が満開で、地面は桜の絨毯に、、、
はらはらと落ちる桜の花弁を、欄干から身を乗り出して掌に受けようとする女性、、、
薄衣を何重にも重ね、腰まで届く艶やかな黒髪を背中に流した、平安朝の女御の装いのその女性、、、
類「つくし、そんなに身を乗り出しては、危ないでしょ!?
5人の子持ちなのに、全然落ち着かないんだから♪」
つくし「うふふ、、、
だって、こんなに美しいんだもの♪
目で楽しんで、香りを楽しんで、綺麗な花弁に触れてみたいの♪
水盤に張ったお水に花弁を浮かべて、楽しみたいわ♪」
類「仕方がないな、俺も手伝うよ♪
いつまでも少女のようで愛してるよ♪」
つくし「もう、類ったら♪
私も愛してる♪」
帝の装いの類、女御の装いのつくし、、、
桜舞う欄干に身を乗り出して、蝶のようにひらひら舞う花弁を掌に留まらせて、見つめ合う二人、、、
日の光を浴びて、キラキラ輝いている一対の比翼の鳥、、、
言葉もなく見とれていると、、、
藍「ママ~♪」
桔梗「しっ、ママじゃなくて、ここでは、お母様でしょ♪」
藍「う~、お母様、抱っこ~♪」
類「お父様が抱っこしてあげる♪」
藍「やだ、ママ、抱っこ♪」
つくし「ふふ、甘えんぼさん♪
いらっしゃい♪」
桜の花弁を類に預けて、藍を抱き上げるつくし、、、
つくしに抱っこされて、離れるものかと、しっかりしがみつきながら、類を睨み付ける藍、、、
類「やれやれ、桃が生まれてから、甘えんぼになったな、藍、、、」
つくし「うふふ、でもすぐに桃に夢中になって、私のことは二の次になってしまうわ♪」
類「つくしには、俺が居れば良いの!」
紫苑「僕も抱っこ~♪」
つくし「じゃあ、順番ね♪」
椿「こ、これは夢?
あれは、つくしちゃん?」
バコッ!
総二郎「痛ってえ! 姉ちゃん、あにすんだよ!?」
椿「痛い? 本当に痛いのね?
じゃ、夢じゃない!
つくしちゃん~~♪」
司《牧野! 生きてた!
生きていてくれた!
牧野! 牧野の本物の笑顔だ!》
藍を降ろして、紫苑を抱き上げようと屈んでいたつくし、、、
突進してくる音に体を起こした途端、椿に抱き締められ、お決まりの窒息寸前騒ぎ、、、
硬直したまま、見つめる司、、、
司「・・・・・」
あきら「司、涙を拭け!
嬉しい時に女々しく泣くんじゃねえ、、、
牧野が気にするぞ!」
自分が泣いていることに気が付いていなかった司、、、
慌てて、拳で涙を拭うと、、、
司「生きてた!」
総二郎「ああ、生き抜いて、類と幸せになっている、、、
だから、お前もそろそろ荷を降ろせ♪」
あきら「さっ、側に行こう♪」