愛は惜しみ無く奪い与える38
花沢家には、口伝の家訓がある、、、
それは、あの少女の絵にまつわるもの、、、
俺は、そんな家訓を教えられる前に、絵の少女に恋をしていた、、、
厳しい英才教育も、彼女の為と聞けば、頑張れた、、、
彼女の為にバイオリンを奏で、彼女に捧げる曲も創った、、、
だが、時が経つにつれ、待ち望む彼女は現れず、滑稽な程着飾り気持ち悪くなる程香水を振りかけた厚化粧の女ばかりが、寄ってきた、、、
特に日本に帰って来てからが、酷かった、、、
肌を出し過ぎなドレスで、思わせ振りに腰を振り近づいて来ては、態と胸を押し付け、キャンキャンキーキーと聞くに堪えない声で、おべっかを言う馬鹿な女達、、、
そんな状況の中、俺の生きている時代では彼女は存在しないのだ、彼女に会えないのだ、俺では彼女の運命の相手に成れないんだと言う思いに至ったのも、無理からぬことだったんだ、、、
俺の細胞の一つ一つすべてが、彼女を求めているのに、彼女に会えない、彼女を得られない苦しさに、俺の精神が悲鳴をあげてしまったんだ、、、
荒れた俺は、どうでもいいような女を遊びで抱いた、、、
今から思えば、馬鹿だった、、、
だって、愛の無いセックスって、ただの排泄作業だったんだ、、
一瞬の排泄の快感とその後の虚しさしかなかった、、、
虚しさを知った俺は、殻に閉じ籠もった、、
俺の精神は、防衛機能を発令し、俺は、引きこもり、無口、無関心、無愛想になった、、、
只、英徳の三人だけは、ちょっとばかり面白い奴らで、時々一緒に行動しては、奴らを観察していた、、、
この英徳の三人とは、各々が問題を抱えながら、適度な距離感でつるんでた、、、
そんな俺達の仲間として、静が絡んできて、思春期の憧れのような感情を静に抱いたけど、憧れは憧れでしかなかった、、、
俺は、高校3年にして、人生を諦めていたんだ、、、
フランスでは、絵の彼女を観ていれば、まだ一時世界に彩りがあったけど、日本に来てからは、世界は彩りを無くし、灰色になってしまった、、、