運命の女1
あ~まただ、、、
蔑む冷たい刺すような眼差し、、、
私の心が幾重にも凍りついていく、、、
どうしてどうして道明寺は、私のことだけ忘れちゃったの!?
どうして!!
海ちゃんを抱きしめ、海ちゃんにだけ愛しげに微笑みかけている道明寺。
もう道明寺のなかに、私はいない。
いないどころか、道明寺にとって忌み嫌う排除すべき存在の私、、、
思わずグラリとなった体を 後ろからそっと支えてくれた花沢類。
「俺はいつだって牧野の側にいるよ」と
耳に届く優しい声、、、
心配して私を見つめる桜子、滋さん。
何故か道明寺に怒りを顕にした西門さんと、いつもの役割で西門さんをしきりに宥めている美作さん。
「今は司に怒るより、牧野を守るほうが大事だろ!」
すべてが 自分に起こっていることなのに、どこか他人事のようで、、、
あ~そうか、、、
そうなんだ、、、
時がきたんだ、、、
妙にストンと納得してしまった私、、、
振り向いて花沢類に微笑みかけると、鞄から紙袋を出してテーブルに置く。
「道明寺さん、最後だから聞いてください。」
皆が息を飲むなか、軽蔑したように片眉を上げた道明寺。
そんな道明寺に勝ち誇ったように更にしがみつく海ちゃん。
「あなたの中に私がいないように、私が好きだった道明寺は、もういない。でも思い出は、確かにここにある。」と自分の胸に手をあてる。
「それで充分。
これは、道明寺さんから頂いた物。
今の私には分不相応な必要のない物。
お返しします。
ありがとう。さようなら。」
これが最後と微笑んだつくしの瞳から静かに流れる綺麗な涙。
誰もが身動きもできずに、ただその凄烈な涙にみとれるばかり、、、
綺麗に一礼すると迷いのない足取りで出ていくつくし、、、
扉の閉じられる音が引き金になったように、あわてて動き出すT2、F3。
「司、土下座してまでお前が頼んだ時に、どうして譲ってしまったのかと、、
譲らなければよかったと、、
あれから何度後悔したことか、、
何度も自分を責めたことか、、
牧野が許しても、こんなに牧野を何度も傷つけたお前を俺は許せない、許さない!
お前に会うのもこれが最後だ。
忘れるな!俺は、もう二度と譲らないから!後悔しても遅いからな!」
つくしを追いかける類。
「類!」
「何?総二郎」
「俺も牧野を守るから!」
「ふん、牧野は俺のもの。やらないよっ!」
「類!総二郎!牧野はまだ誰のものでもないだろうが!」
「へぇ、あきらも自分の気持ちに気がついてたんだ~
でも、俺、負けないから。
じゃねっ!」
「「あっ、こらっ、待てっ!」」
「司!牧野を傷付け続けて、この様か!
呆れたぜ!
今のお前とは付き合いきれネェ、、じゃな!お前はその最低女とでも、よろしくやってろ!」
「司、哀れだな、、最高の女を失ったことすら理解出来ていないとは、、ま、似合いのその女とよろしくやってろ!
悪いが、暫く会わない方がお互いのためだ、、じゃ!」
「・・・つくし、凄い!素敵だぁ!
滋ちゃん、またまた惚れ直したよ~」
「本当に、先輩は最強な女です。
あり得ないほど惹き付けられているはずなのに、更に惹き付けられてしまう。
先輩の虜ですね、私達♪」
「という訳で、失礼いたししますね、道明寺さん。それにしても、道明寺さんは、得難い宝を失ってしまいましたね。記憶と一緒に、本質を見極める能力も失ったんでしょうか、、」
「滋ちゃんも、今の司は好きになれない!
最低な人間に成り下がってる!
がっかりだよ!」
憐れみと侮蔑を残して 去っていく二人。
「なによ~黙って聞いてれば、訳わかんないことばかり、、
司君は、海がいればいいんだよねっ、司君!?」
「あっ?・・ああ・・」
「ねっ!司君、ベッドに行こう♪
司君、抱っこして連れてって♪」
「あっ?・・ああ・・」
「クスクス、海ね、新しく出たバッグが欲しいの、買ってもいい?」
「あっ?・・ああ・・」
「大好き、司君!」
何故かイライラする。
あんなど貧乏な女のどこがいいのか、あいつらの気が知れない。
「司君、早くきて~
海をめちゃくちゃにして~」
司君って、テクはないけどスタミナ充分だし、この顔、このスタイル、それになんといってもお金持ち~
早く妊娠して結婚まで持ち込まなくちゃ♪
「司君♪ 素敵♪ あぁ、いい、、」
司は、軋むベッドの音や女のあからさまな矯声に、何故か心を荒ませながら、腰を打ち続けていた、、、
「西田! 溝鼠を都合よく忘れてくれたと思ったら、なんなの? この小娘は?」
「小さな不動産会社の社長の娘ですが、素行の悪さ、品の悪さは、目に余る人物です。」
「まあ、こんな小娘の一人や二人、すぐに片付けられるわ。それより、司をこちらに呼び寄せて、滋さんとの話を進めますよ。」
「しかし、大河原のお嬢様とのご縁談は、お嬢様ご本人からお断りがあったはずですが、、」
「なんとしても、石油が欲しいのよ。
世間知らずのお嬢様を手玉にとるくらい、どうにでもできるわ。」