ヴァレンタインに(改)1
類がフランスに来たのは、大学2年の秋のこと、、、
花沢物産の跡取りとして、学業と仕事の二足のわらじを履くために、フランスの大学に留学したのだった、、、
類は、がむしゃらに勉強し、がむしゃらに仕事にのめり込んだ、、、
まるで何かを追い払うように、まるで何かを忘れたいように、、、
そんな類を心配して見守る聡や瑠璃、静の視線にも気付くこともなく、、、
そして、大学4年の2月、、、
類「はあ、去年はヴァレンタインのチョコが届いてきたけど、今年はもう来ないだろうな、、、
そうだよな、司が迎えに来るから、それどころじゃないだろうし、第一、他の男にチョコを贈るのを、司が許す訳がないよな、、、
今度こそ、はっきり諦めなくちゃいけないな、、、」
そんなある日、、、
聡「類、明日のケビン氏のパーティは必ず出席しなさい、、、
ケビン氏のご指名だからな、、、」
類「ケビン氏が?、、、
俺は面識が無いのに、何故俺を?」
聡「本当に面識が無いのか?
態々先方が指名してきているんだ、、
、
何処かでお会いしているんじゃないのか?」
類「ケビン氏程の名士に、お会いして気が付かない訳がないですよ、、、」
聡「ならば、日頃のお前の頑張りが、ケビン氏の目にとまったんじゃないか!?」
類「・・・・・」
当日パーティ会場で、、、
静「類、もう少し、愛想良く出来ないの?」
瑠璃「そうよ、パートナーの静さんにも失礼よ?」
聡「しっ! ケビン氏です、、、」
ケビン「類君、今日は良く来てくれたね♪
そちらは、類君のご両親だね、初めまして♪
ようこそ、我がパーティへ♪
楽しんで頂けたら、幸いです。
ところで、そちらのお嬢様は?」
静「藤堂 静と申します。
間もなく、藤堂からモーガンに変わりますが、、、」
ケビン「おお、アラン・モーガン氏のフィアンセですか!?
今日は、アランは?」
静「生憎、アメリカに出張中で失礼しております。」
ケビン「それを聞いて安堵しました。
類君のフィアンセではないんですね?」
類「!!!」
全員が、一瞬固まります、、、
何故、類を指名してきたのか?
何故、類のフィアンセの有無を気にするのか?
答えは、、、、
《ひょっとして、俺にお気に入りの娘を押し付ける気か!?》
類「ケビンさん、初対面で大変失礼なことを申し上げますが、もしや私に女性を紹介なさるおつもりでしたら、辞退させて頂きます。」
聡「これ! 類!
いきなり何を!」
ケビン「いやいや、なかなか興味深い話なので、もう少し続けさせてください。
類君、何故、会ってもいない女性を、拒否なさるのかね?」
類「何故なら、私には、心に決めた女性がいるからです。
あとにも先にも、その女性以外を愛することはないからです。」
聡、瑠璃、静が、実らぬであろう類の想いに、悲しげに顔を伏せます、、、
ケビン「ほお~、そんな女性がいたとは、、、
だが、何故、今此処にその女性が居ないのかね?」
類「それは、、、
その女性は、他の男に嫁ぐからです!」
ケビン「なのに、その女性だけを愛していくと言うのかね?
諦めて、他の女性と幸せになろうとは思わないのかね?」
類「何度も諦めようとしました!
けれど、私の心が、彼女を求め、彼女を愛する事を止められないのです!
私は、一生彼女への愛を抱えて生きていきます。
ですから、もし、私に女性を紹介なさるおつもりでしたら、お考え直しください、、、」
ケビン「いやぁ、気に入った!
類君の真っ直ぐな心、誠実な態度、、、
聡殿、私は、ますます類君を気に入りましたぞ!
今後も長いお付き合いをよろしく願いますよ♪」
聡「ケビン氏にそこまで仰って頂けるとは、光栄の至りです。
こちらこそ、よろしくお願いいたします♪」
ケビン「さて、類君、君が一途なのは良く分かったが、意固地になってはよろしくないよ!?
私の見識眼を少しは信じてくれないか?
ほら、会って欲しい女性がやって来たよ♪」
と、目線で類の背後を示します、、、
聡にも促され、嫌々後ろを振り返ると、、、
そこには、あきらと総二郎にエスコートされたつくしが、目を潤ませて類を見つめながら、近付いて来ます、、、
類「!!! 牧野、、、」
思わず、口の中で呟く類、、、
つくしにその声が届く筈もないのに、つくしがピクンと震え、立ち止まる、、、
あきら達が見守る中、震える手を類に向かってソロソロと伸ばすつくし、、、
瞬間、類が電光石火で駆け寄り、つくしを抱き締める!
類「牧野、牧野、どうして?
牧野、、、」
つくし「類、愛してるの、貴方を!
どうしようも無い程、愛してるの♪」
類「愛してる、愛してる、愛してるんだ!
牧野、牧野、牧野!
俺のものになって?
俺を愛して?」
つくし「もう愛してるっ♪
世界中で一番愛してるの♪」
類「もう、離さない、離せない!
俺と結婚して?」
つくし「類〃〃〃」
ケビン「ハハハ、つくし、ちゃんと返事しなさい!?
何しろ、公開プロポーズしているんだから、早く返事を!
皆も、つくしの返事を聞きたがっているんだからね♪」
皆の注目の的になっていることに、ようやっと気が付いたつくし、、、
つくし「きゃっ! 類、どうしよう?」
類の胸に真っ赤な顔をうずめて、しがみつくつくし、、、
だらしないほど緩んだ顔で、更にきつくつくしを抱き締める類、、、
類「どうしようじゃないでしょ!
はいでしょ! イエスでしょ! ウイでしょ!」
と、思いの丈を込めてつくしの震える唇を塞ぎます、、、
どんどん深くなるキスに、翻弄され続けるつくし、、、
類「返事は、つくし?
返事しないと、この場で押し倒すよ♪」
つくし「はい、イエス、ウイ、ウイ、ウイ!!!」
類「ありがと、つくし!
俺、世界一幸せ♪」
あきら「ヴァレンタインの届けものに、満足したか、類?」
総二郎「ケビン氏に頼まれて、日本から届けに来たんだ、ありがたく思えよ!」
類「あきら、総二郎、来てたんだ!
俺、つくしと消えるから、あとはよろしくね♪
ケビンさん、素敵な女性に引き合わせて頂き、ありがとうございます♪
積もる話もありますので、今日はこれで失礼いたします♪
ご挨拶は、また後日伺わせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
ケビン「恋人のヴァレンタインを邪魔するつもりはないよ♪
我が娘となったつくしを悲しませないでおくれ?」
類「つくしを悲しませることは一切しません!
ケビンさん、本当にありがとうございます♪
では、失礼します♪」
と、つくしを抱き上げると、さっさと会場を後にする類、、、
総二郎「はあ、これだよ!
全く類の奴、、、」
あきら「あんなに幸せそうな類、初めて見たな!
あの顔に免じて、許してやろうぜ♪」
総二郎「だな!」
瑠璃と静は、喜びの涙を密やかに流しており、その二人を、聡が、潤んだ目で見守ります、、、
聡「ケビンさん、この度は本当にありがとうございます♪
そして、あきら君と総二郎君の二人も、大切なつくしちゃんの送り届け、ありがとう♪
類のあんなに幸せそうな顔を、初めて見ました♪
それもこれも、ケビンさんと貴方達のお陰です♪
フランスに来てからの類は、見ている方が辛くなる程、苦しんでおりました、、、
つくしちゃんの事で苦しんでいるのは、分かっていましたが、、、
お恥ずかしい事に、類と私は、私の稚拙さ故に長らく疎遠になっておりましたので、どうやって手助けしたら良いのやら、皆目見当がつかなかったのです、、、」
ケビン「水は低きに流れていく、、、
自然に落ち着く先に落ち着くものです、、、
ただ、ほんの少しの後押しが必要な時もあるのです、、、
ほんの少しのね♪」
Happy Valentine♪