花嫁は誰?6
司「おい! 何故俺は、こんな狭い部屋に押し込められてるんだ!?」
西田《砂漠で暮らした方には、この広い部屋も息が詰まるのでしょうか、、、》
西田「申し訳ございません、、、
柄左様のお母様の楓様がいらっしゃるまで、ご辛抱頂けますでしょうか」
司「俺の母親?
じゃ、何故、今まで俺を放っておいた!
母親だったら、必死に捜すだろう!
で、俺が本当にその柄左とやらなら、母親が迎えにくるだろう?
それとも、捜すのも、砂漠に迎えに来るのも、したくなかったってか!?
俺は、こんな狭っ苦しい所、ごめん蒙るぜ!
砂漠に吹く風が懐かしいぜ!
じゃ、悪りぃが、そこ退いてくれ!」
西田「申し訳ございません、、、
どうしても、此方でお待ち願います、、、
外には、SPも控えておりますので、無用な騒ぎを起こしませんように、、、」
司「ふん! SPごときが怖くて、態々此処まで来るかよ!
1度は母親の顔を拝んでも良いかと、付き合ってやってるんだ!
楓と言うらしいが、ババアでたくさんだ!
ババアが来ないなら、此方から会いに行ってやる!
退けっ!」
SP「柄左様、今、お部屋からお出になってはいけません!」
司「煩いっ!
この俺の行く手を遮る輩は、容赦しないぞっ!」
楓「何を騒いでいるのですか!?」
西田「会長、申し訳ございません、、、
柄左様が、少々待ち草臥れたようで、、、」
司「あっ? お前が俺の母親を名乗るババアか?
よくも狭い部屋に押し込んでくれたな!」
楓「ふっ、忍耐、我慢、他者への敬い、そんな単語は貴方にとって存在しないようね、、、
全く父親そっくりだわ!
まっ、とにかく部屋に戻って二人で話しましょう、、、
西田も下がって良いわ♪」
司「西田! 旨いアラビアンコーヒーを頼むぜ♪」
楓「西田は、貴方の部下では無いわ!
人使いの粗いとこまでそっくりとは、先が思いやられる!
西田、タマにコーヒーを持ってこさせてちょうだい、、、」
司「アラビアンコーヒーだぜ!」
楓「アラビアンコーヒーで、、、」
西田「畏まりました、、、」
楓「さて、柄左さん、DNA検査でも証明されているので、貴方が亡き会長の息子である事に間違いはありません、、、」
楓の腹に一物の含みのある話にも、司は片眉を上げてみせただけで、動じません、、、
楓「まあ、そのクルクル頭を見れば、一目瞭然ですけど、、、」
司《ふん、そんな事で騙されるとは、天下の道明寺会長も大したことねえな!》
司「で、今更、呼びつけて何の用だ?」
楓「砂漠で育ったにしては、教育がそこそこ身に付いていらっしゃるのね!?
どんな暮らしをなさっていたのかしら?」
司「キャラバンに拾われて、語学は必要にせまされて覚えた、、、
親方の奥様が良い人で、俺を息子同然に可愛がってくれた、、、
俺は役に立ちたくて、使いっ走りから、用心棒もどきまで、何でもやった、、、
先日、そのキャラバンが、襲われて辛うじて生き残ったのは親方と俺だけ、、、
だが、親方は傷がもとで死んじまった、、、」
ノックノック、、、
タマ「柄左坊っちゃん!
よくぞ生きて!
お帰りなさいませ!
よくお顔を見せて下さいな!?
まあ、お父様によく似ていらして、、、
生きていらしたら、どんなにお喜びなさったことか!
タマは、長生きした甲斐がありました!
柄左坊っちゃんに再びお会い出来るとは!」
涙を流して喜ぶタマ、、、
司《タマさんの喜び様、、、
やっと歓迎されたな、、、
それに引き替え、ババアの冷たい対応、、、
やはり、、、》
部屋を出ていくタマに笑顔を見せて見送ると、中断などしなかったように、淡々と話を続けます、、、
司「その臨終の時に、聞かされたんだ、、、
俺は、誘拐されて砂漠に連れ込まれた赤ん坊で、誘拐犯は稀にみる大規模な砂嵐に巻き込まれて死んだって、、、
そいつらは、赤ん坊を誘拐しては、闇市で売りさばく商売人だったそうだ、、、
俺の泣き声を聞き付けて、助けてくれたのが奥様さ、、、
奥様は子供を亡くしたばかりで、精神的に不安定だった、、、
だから、敢えてキャラバンにも同行させてたそうだ、、、
その奥様が、俺を抱いて離さなかったんで、暫くそのままにのつもりが、いつの間にか親子のようになってしまったと言う話、、、
親方が、実の親を捜せと言い残したんで、捜して行き着いたのが、此処って訳、、、、
何かご質問は?」
楓「調査報告も似たようなものだったわ、、、
で、何がご希望?」
司「先ず答えてくれ!
俺の実の母親は、生きてんのか?」
楓「あら、私が母親ではないと、よく分かったわね!?」
司「ふん! あんたの態度で分からない方が不思議だぜ!
ひょっとして、誘拐もあんたが仕組んだのかもな!?
今となっちゃ、何の証拠も無いがな!」
楓「ほほほ、よくぞ見破ったと誉めてあげましょう、、、
柄左さん、貴方は、昔も今も邪魔者なのよ!
会社は、社長である貴方の姉の椿が旨く運営しているので、ご心配なく!
いくら欲しいの?
此処から消えて頂けるなら、金額をはずみますわよ!?」
パンパンパン、、、
司が、嫌味たらしく大袈裟に拍手します、、、
司「ブラボー!
だが、残念ながら、俺はしばらく此処に住むぜ♪
あんたみたいな強欲ババアは、研究の価値がありそうなんでね♪
それから、俺に何か仕掛けてきたら、今のあんたの会話、表に出すよ♪
あっ、ライブで今の会話を映像も一緒に俺の弁護士事務所に流したから、、、
弁護士事務所の全員及び偶々弁護士事務所に来ていた相談者達が見たり聞いたりしていて、今ごろ証人として署名を終えている頃だね♪
悪い事言わないから、大人しくしていてください、楓お母様♪」
楓「・・・・・」
そこへ、ドンと飛び込んできた人物が、、、
椿「柄左~! つかさ~!
あんた、どんだけ心配していたか!
どんだけ捜していたか!
何故、お父様がご存命のうちに帰ってこなかったの!?
つかさ、今まで砂漠で暮らしていたって、ほんと!?
暮らしは辛くなかったの!?
病気はしなかったの!?
なんでもっと早く帰ってこなかったのよう!
そうだ! お腹空いてんじゃないの?
つかさは、何が好物なの?
グスッ、情けない!
たった一人の弟の好きな物も知らないなんて!
うわぁん! 好きな物教えてよう!?」
司《怒ったり泣いたり、忙しい奴!
でも本音が聞けて嬉しいかも、、、》
司「姉ちゃん、落ち着けって♪
この部屋には、俺の帰宅を喜んでくれる人が一人は居るって分かって、帰ってきた甲斐があったぜ♪」
その言外の意味に気が付き、楓をキッと睨み付ける椿、、、
椿「柄左の事は私が守るから、、、
それに仕事に馴れてきたら、私を引き継いで欲しいの、、、
本当に良く戻ってくれたわ♪」