俺の、、、
『この子猫の子子猫のつくし』の下書きを、まるっと消してしまって立ち直れず、、、
なので、気分を変えて、短編を、、、
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虚しい人生に耐えきれず、海に向かう、、、
冬の海は、まるで俺の心象風景のよう、、、
寒々と冷え冷えと深々と、、、
俺はただ波の音に聞き入る、、、
何度目かのため息が、宙に消えていった時、全世界が停止した、、、
海面は波1つ無く、冷たい鏡面のよう、、、
ただ雲だけが静かに流れ、まあるい月が顔を出し、、、
鏡面に光の道を映し出す、、、
《はあ、あの光の道を歩けたら、このやるせない世界から出ていけるのだろうか、、、》
暗闇の中、絶望と希望を抱いて、ただ光の道を見つめ続ける、、、
その時、りろりろりろと月が瞬き、、、
ちりりんちりりん鈴の音が、、、
光の道に人影が、、、
さやさやさやと歩いて来る、、、
「姫のお渡り、控えませ~♪」
「姫のお渡り、ご覧あれ~♪」
身動きも出来ず、ただただ見とれる俺の側を天女の一行が通り過ぎてゆく、、、
ちりりんちりりん、、、
天露を織ったような薄衣を重ね、豊かな黒髪を裾まで流し、甘やかな香りだけを残して去って行く、、、
ちりりんちりりん、、、
「待って! 待ってください!」
乙女が立ち止まり振り返る、、、
透き通るような白い肌、、、
星を宿した黒曜石の如くの煌めく瞳、、、
ぷっくりした紅い唇、、、
そして、鈴の音のような声、、、
「どなた?」
そう、彼女が俺に話し掛けた時、凍えた心の臓が力強く打ち始め、世界は彩りに溢れた!
「俺、類、花沢類、、、貴女は?」
「つくし、、」
類「どちらへ? 何処に?」
つくし「何処へでも、、、」
類「では、我が家の別荘へ♪」
俺は、天女を捕まえた!
俺の天女、俺の女神♪
俺のかぐや姫♪
日が登り、月の光の道が消えても、可愛いいつくしは、俺の腕の中、、、
穢れを知らぬ白いバラ、、、
美しく花開いた俺の深紅のバラ、、、
薄衣を剥ぎ取り、何度も貫き揺らして、啼かせた俺の子猫、、、
そして、封印が解け、俺は思い出す、、、
類「昔、お前を1度見掛けた、、、
あの時から、俺は百年待った、、、
用意周到に網を張り、決して逃さぬように、、、
お前は未来永劫、俺のもの♪」
つくし「以前、貴方をお見掛けしました、、、
あれから、月日を数えてため息ばかり、、、
あっ、 あん♪
あっ、あぁぁぁぁ!!」
つくし「類~♪
また、寝てる~♪
もう寒いんだから、風邪引いちゃうよ!?
それにしても、類って、本当に王子様みたい、、、」
類《クスッ、俺のかぐや姫は、まだ目覚めていない、、、
俺は巧妙に網を張り巡らせ、お前を捉える、、、
ほら、もう一歩、更にもう一歩、、、》
類「捕まえた♪」
つくし「わわ、類~、起きてたの~?」
類「ん、今、起こされた♪」
つくし「あ、ごめんなさい、、、
煩かった?」
類「つくしの声は、天上の音楽だよ♪」
つくし「類~〃〃〃
あの、離して?」
類「やだ!
折角、つくしが俺の腕に飛び込んで来たのに!?
それに、なんか寒い、、、
つくし、暖めて!?」
つくし「類~!
風邪引いちゃったんじゃない?
ほら、車呼んで、帰って寝なくちゃ!」
類「俺、一人じゃ歩けないかも、、、」
つくし「もう!
こんなところで寝るから!」
類「此処なら、つくしに会えるから、、、
なのに、来るのが遅いよ!」
つくし「はいはい、私が悪うございます♪
ったく、私は授業があるんです!
それに、待ち合わせの約束なんてしていないのに!」
類「なんか、文句が聞こえた気がするけど!?」
つくし「文句などありません!
早く帰りましょ!」
類「うん、帰ったら、つくしが看病して、暖めてよ?」
つくし「はいはい、我が儘坊っちゃん、ちゃっちゃと車に乗って!?」
類「返事は1回!」
つくし「はい!
ったく、病人には優しく、我慢我慢、、、」
類《クスッ、あんた、分かってる?
今日は、お泊まり決定だよ!?
明日は、俺の腕の中であんたの誕生日を迎えるんだよ♪
俺は、何度でもお前を捜し捉える♪
捉えたら、決して離さないよ、俺のかぐや姫♪》