慟哭18
「ミスター アレキサンダー、今回の風景画も素敵ですわ♪
あらっ! この絵!
この女性、なんて生き生きとしていて、今にも話し掛けてくるような、、、」
類「売らない、、、」
《ちっ! 一言で却下ですか!》
「拝見すればするほど、魅入られてしまいます、、、
この絵の女性を愛してらっしゃいますのね!?
愛していなければ、描けない絵ですわ♪
今、この女性は?」
類「居ない、、、」
「あっ、失礼いたしました、、、」
《ホントに無愛想、、、
少しでも画廊に顔を出してくだされば、この顔ですもの、一気に有名になるのに、、、
でも、この女性を失って、お辛いのかも、、、
けれど、この絵は美術館レベル、現代のモナリザ、いえ、マリア様だわ!
我が画廊に一時期でも飾れたら、、、》
「ミスター アレキサンダー、この女性の絵をお借り出来ませんでしょうか?
この絵で、皆さんを癒して差し上げたいのです、、、
無理を承知でお願いいたします、、、」
類「・・・・・」
「この女性の笑顔は現代のマリア様、、、
なのに、女性の私から見ても、ゾクッとする妖艶さがある、、、
この女性に1度出会ってしまったら、側を離れられなくなるでしょうね♪」
すると、女性に対する賛辞が気に入ったのか、類が僅かに微笑んで、、、
類「此方で配送する、、、
少しでも傷付けたら、あんた死ぬよ!」
《ひぇ~! 文章で喋ったら、これですか~!
でも、貸し出しO.K.ってことですよね?
私だって、伊達に画廊を開いている訳じゃない!
これは、一生に1度出会えるかの奇跡の絵!
根性据えてやりますわ!》
「はい、傷付ける事がありましたら、この首差し上げます!」
類「要らない、、、
海に沈める、、、」
「・・・と、とにかく、ありがとうございます♪
こんな素晴らしいチャンスをくださり、感謝の言葉もありません♪」
類が、それ以上は聞く必要も話す必要も無いとばかりに、黙ってアトリエを出ていきます、、、
田村「それでは、こちらにサインを、、、
呉々も約定厳守で願います。」
「あのう、先程の話は冗談ですよね?」
田村「海に沈める件ですか?
いいえ、あの方は冗談は仰りません。
呉々もお気を付けてくださいませ。
では、いつものように、運び込みは当方でいたします。
今回は貸し出しの絵がございますので、警備も当方が指揮いたします。」
《うわあ、冷や汗ダラダラ、、、
あれほどのハンサムなのに、恐いほど冷たくて、人外の生き物みたい、、、
早いところ失礼して、温かい飲み物でも飲まないと、、、》
「では、ミスター アレキサンダー様によろしくお伝えくださいませ。
失礼いたします。」
・・・・・
類「田村、煩いの帰った?」
田村「はい、しかし、貸し出しを許可して宜しかったのでしょうか?
これまで、ここフランスにアトリエを偽装してまで、情報操作しておりましたのに、、、
つくし様の絵が画廊に公開されますと、F3の方々にいずれ知られてしまいます、、、」
類「それが、狙いだから、、、
司に気持ちの区切りを付けてやりたいんだ、、、
いつまでも、つくしを想って独身でいられたら、つくしが気に病んじゃうからね♪」
田村「!!!
もしや、つくし様は、記憶を?」
類「うん、大部分取り戻したよ♪
で、あきらや総二郎に申し訳ながっているんだ、、、
あいつらに会ってパニックになった直後に、島に移住したからね、、、
あいつらに会って謝りたがってるんだよ♪」
田村「本当にお優しい、、、
ご自分の記憶の件でお辛い想いをしていらっしゃるでしょうに、、、
美作様達の心配を先になさるとは、、、」
類「俺の愛するつくしならばこそだよ♪」
田村「ご馳走様です。
では、会合はいつ? 何処で?」
類「モハメドの別荘で、クリスマスに、、、」
田村「ファーストコンタクトは、モハメド様ですか?」
類「総二郎にとって、東アジアに茶道の文化を広めるビッグチャンスだし、、、
あきらにしても、石油がらみの事業に乗り出す大きな後ろ楯を得るチャンスだよ♪」
田村「では、司様は?」
類「まだだよ、、、
あいつが結婚して落ち着いてからかな?、、、」
《司様の強引さで、つくし様が苦しめられないようにですね、、、
流石に、つくし様至上の類様です、、、》